不出来を優しさで着飾ること

いま、人生でいちばん髪の色が明るい。顎の辺りで切り揃えられたボブ、アーモンドにもミルクティーにも見える色。一度もブリーチの経験がない髪でもここまで明るくなれるのだと知った。

 

髪を初めて茶色に染めたとき、これでようやく生まれ変われるような気がしたのを覚えている。その感覚は染め慣れた今でもあって、今回はオレンジブラウン、今回はカーキグレージュなどと魔法をかけてもらうたびに新しい自分を見つける。黒じゃないのなら、黒以外であれば、暗くて後ろ向きな性格を誤魔化せると思っていた。

 

今の職場になって1年と少しが経過したけれど、全く馴染めたとは思えない。社会人の採点方式を100からの減点式だと思っているから、何かひとつ失敗をするたびに呼吸が遠のく心地がする。

 

注意不足で面倒な仕事を増やしてしまったとき、一度やったことのある仕事のやり方を忘れてしまったとき。そういうものが発生したとき、呆れられているような気がして堪らなく怖い。明日こそ見放される。1年後にここの場所にいていいと思うだけの自信がない。

 

この日記は何日も寝かせながら継ぎ接ぎにして少しずつ書き足しているけれど、この一文を書いている今日だっていくつもの失敗をしてまた社会人ポイントが減点された。もう削れるところなんてないくらいに削れているが、それでも削れるものは削れていく。また1つ、私は職場の人から不満と呆れを引き出している。

 

起きた時に身体が重くて、なんでもないときに涙が出て、歌を歌っても悲しいとき、私の心は限界だと訴える。まだそうなってはいないけれど、早いうちに開き直るか別の場所へ旅立つかしないとまたあの暗い日々に戻ることになるだろう。

 

異動していった人から貰った「ありがとう」のメッセージ付きクッキーを見たら泣いてしまう気がする。仕事ができない人間に優しくしてくれる人間は貴重だから、もっと優しさを返したかった。3月の匂いを抱いたままで、加速していく4月の渦が苦しい。