泡沫と永遠

新しい街での暮らしを始めて最初の夏が来た。職場の最寄り駅まわりは意外にも緑が多くて、最近はどこか近くの木でセミが鳴いている。鳴き声からしてあれはミンミンゼミだろうと思う。地元ではアブラゼミの大合唱が毎夏ものすごくて、外に出ると聴覚から体力を奪われる心地になったものだった。とにかく、仕事に関する勉強をしたり、そもそもひとり暮らしが初めてだったりと、自動的に月曜から金曜を過ごして気づけば7月も半ば。多少の小さな波はあれど心は比較的健康で、穏やかに慎ましくも幸せに暮らせている、と思う。

 

今日、久しぶりに3年前に一目惚れした音楽を聴いている。音楽は基本的に耳から聴くものだから、一目惚れという表現は少し違うのかもしれないけれど、当時私が欲しかった音は3年後、元気だけれどほんのすこし疲れてしまった私の心にもちゃんと届いた。そのときによって心が欲している音楽は様々だし、月日が経てばあの頃どうしようもなく琴線に触れたものがそうじゃなくなっていくなんて現象もあるものだけれど、この音楽は私にとってそうではないらしい。少しだけ寂しくて、忘れられないから忘れてほしくて、だけど本音では忘れないのだと月光を抱きしめるような、そんな歌だ。

 

物心ついた頃から、ずっと満たされない孤独のために誰かを傷つけてきたと思う。そう思えるようになったのはこの1年ほどのことで、それまではただ自分ばかりがつらいのだと叫ぶことしかできなかったことを申し訳なくも思うし未熟だと呆れてもいるし、だけど愛おしくも思う。過去の自分を全部肯定するわけでもないけれど、その自分が苦しんでも諦めずに繋いできた現在だから絶対に大切に日々を重ねたい。いつまでかわからないけれど、しばらくはこの街で生きていくんだろう。ずっと、という言葉を人生に使うのが今でもあまり得意ではないけれど、できるかぎりずっと、今のようななんでもない生活が続けばいいと思う。続けたいと願っている。

 

くらくらする夏の光が眼前まで迫っていた。せめて焼き尽くされないようにと、同じくらいに輝くことはできなくとも、この光に目を細めて木陰から見つめるくらいにはなりたいと思う。久しぶりに文章を書いたら、何が書きたかったのか全然まとまらなかった。夏を乗り切るために、おすすめのお茶やアイスクリームがあるのならぜひ教えてほしい。