朝のバスで

休憩中にご飯を食べて、それから上司に貰ったブラックサンダーを食べた。今月末はハロウィンだから、それ仕様のパッケージになっている。季節が進むのはいつも早い。ブラックサンダーの味は変わらなくて、高校生の頃同じ部活の男子にそれを奢ってもらったときのままだ。機材と何故かぬいぐるみに囲まれた、少し換気と日当たりの悪い放送室を思い出す。あの2年と少し、放送部で過ごした日々が私の青春だった。

夜に人生を考えるのは良くないと思ったから、朝のバスの中で考えていた。カーテンが締め切られて景色が大して見えない車内はもしかしたら夜と何も変わらないのかもしれない。カーテンを開ければ朝は来るだろうか。

大学3年生の頃、就活のグループディスカッション対策の講義で白い部屋の中に居た。壁と机と椅子が白くて、ホワイトボードもつるりと白く光っていた。1階の隅に位置するその部屋はやっぱり換気が悪くて、昼食後にその部屋に行くと皆が食べたお弁当の匂いがする。蛍光灯の光がびかびかと眩しかった。

もう帰りたいなと思いながら16時過ぎにその部屋を訪ねて、さほどやる気も出ないまま就活対策の講義を受けた。就活をして、社会に出て、年老いるまでの多くの時間を仕事に割いて、私たちは一体何になりたいんだろう。何がしたいんだろう。履歴書を書こうがインターンに応募しようが、いつもそんなことを考えていた私はほんとうに社会に向いていないと思う。皆の顔が知らない人のように映った。

この先なにを持っていればしなやかに生きていかれるのだろうか。大学生だった私はお金さえあればそれでいいと思っていたけれど、今はそうじゃないような気がしている。愛と安寧。いちばん遠くて、でも近くて、素直に生きたら手に入れられるものだ。なんにも難しいことは言わない。だから愛と安寧が欲しい。

書き上げたら結局夜になっていた。人生が何なのかは朝でも夜でもわからない。それでも毎朝、まぶたが開くから生きている。ただそれだけ。